当院でのオンライン診療の精度を高めるための取り組み、工夫が日経メディカル6月号(医療者向け雑誌)に紹介されました。
今後の精度上昇のためのデバイスに向けては現在集音器会社のプリモさんにも協力してもらい安価で精度の高いマイク(心音、呼吸音)の開発をお願い協力していただいています。この会社との出会いは患者さん家族に教えてもらった『聴六』という助聴器でした。それまでの私は医療機器というのは最先端の小型高性能のものが良いと疑いませんでした。40万円もかけて家族がおばあちゃんのために買った補聴器、ほとんどの方はすぐに使わなくなってしまいます。原因は小さいためすぐになくす、スイッチや音量設定も小さいので操作できず、電池がすぐになくなる、音が必要以上に大きくなりキーンと大きな音が出るなどです。80歳後半の要介護高齢者ではある意味大きなヘッドホン型でしっかりと声が聞こえ、電池がきれず、操作しやすいことが大事で、改めて現場に出て生の声を聞く大切さを感じました。
また現在次の流行期に向けて、高齢者でも簡単に使え、価格も安く、耳が遠くても聞き取れ、一方的につながる緊急オンライン通話や今後様々な医療情報と連携できる専用端末の実現に向けて、いくつかの知り合い企業に打診、連携して進めていきます。
ある程度形になったらモニターを行い、行政にも補助が出るように働きかけていきたいです。
今後の感染流行の際(COVID19に限らず)、若者、ビジネスマンたちがオンライン診療を使い、肝心の高齢者が危険をおかしながら来院される世界というのはどうもしっくりきません。高齢者たちは本当に具合が悪いと来院されないことも多いのです。
オンライン診療は対面診療に比べて格段に精度が落ちますので、あくまでも対面診療の補完的診療であることは大前提です。ただ今後、使用する機器の強化、病気の新しい診察、診断方法など、皆で真剣に考えれば精度は上げられるものだと考えています。(オンライン診療における身体所見の取り方、見逃してはいけない所見、限界を明らかにする、全てが新しい挑戦、領域です。)
他にも、心拍数、呼吸数、SPO2、血圧などの医療情報をモニタリングできる機能が備われば、危険度の高い患者を自宅にいながらにして多職種で入院レベル近くまで経過観察、治療することも可能になると思います(入院中だって四六時中横に医療者がいる訳ではないので。。。)。
実は私は何がなんでもオンライン診療推進という考え方ではなく、どうせやるなら安全で効率的なもの、そして工夫して改善していくことに興味を感じています。世界ではコロナ禍前中国とイギリスなどでオンライン診療が進んでいました。皆、足りないもの、出来ないことを知り、それを皆で改善、補填するよう工夫し進化しています。医療は国によって大きく考え方が違います。日本ならではの和のオンライン診療の方法やデバイスがきっとあるはずです。感染が怖いから、いくのが面倒だからオンライン診療ではなく、マスク姿ではない先生、患者の顔が見たいからオンライン診療という方もきっといるはずなのです。
ただ、今後は偽医者や薬の転売など悪用する方が出てくることも懸念され、こちらは組織トップの先生方、政治家の先生方に頑張ってもらい安全な制度設計と慎重な導入が必要です。個人的にはオンライン診療特区をつくり、集中的に問題を洗い出す作業を効率的に行うのが理想的と考えています。